●豊英島(千年の森)の大半はかつて炭を生産するために20〜30年程度で伐採が繰り返されていたコナラの薪炭林です。伐採後は切り株からの萌芽(ぼうが:ひこばえのこと)により再びコナラ林を育てました。
森林の世代交代(更新)に萌芽を用いることからこの方法を萌芽更新(ぼうがこうしん)と言い昭和30年代までは広く行われていました。
●豊英島では、2003年11月に400uを伐採し、萌芽更新を実践しています。なお、一部の花木は修景用に残すなど現代の萌芽更新のあり方を模索しています。また、どんぐりからの実生(みしょう)についても、一部を育て次の世代のコナラの配置がバランスよくなるよう計画しています。
●萌芽と実生それぞれについて試験プロットを設け、推移を調査(観察)しています。これまで2年間の調査から、萌芽更新といってもそれほど簡単ではないことが見えてきました。
コナラ林の伐採(03年11月)
伐採木の整理(04年2月)
一部はシイタケ原木に一部は炭に(04年3月)
切り株から萌芽(ヒコバエ)が(04年5月)
どんぐりから実生(みしょう)も数多く発生した(04年5月)
調査株数 3株(萌芽数18本、20本、20本)の平均
調査月 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | メモ |
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萌芽生存数(本) | 19.3 | 15.3 | 15.0 |
14.3 |
12.0 | 11.0 | 9.3 | 9.3 | |
生存率(%) | 100 | 79.8 | 78.0 | 74.4 | 62.6 | 57.6 | 49.3 | 49.3 | |
生存萌芽の高さ(cm) | 62.6 | 64.7 | 65.2 | 65.0 | 64.9 | 67.0 | 70.3 | 70.3 |
考察
(8月調査時点)
○ 4月を100とした生存率は60%台になったが、株によりバラツキがある。
○ 成長の良い萌芽が枯れることもあり、生存萌芽の平均高さには大きな変化がない。
(9月調査時点)
○ 生存率は50%台になり、萌芽ごとの生育状況の差も大きく、枯死寸前のものもかなり見られる。
○ 高さには差がないが、枝数には大きな変化がある。どう計測するのか来年以降の課題である。
(10月調査時点)
○ 生存率が50%を割った。
○ 萌芽が切り株の低い位置ほど元気な印象を受ける。
平成17年考察(まとめ) |
○一株あたりの萌芽数は19.3本(4月)から9.3本(11月)となり、生存率は49.3%であった。 |
○4月の萌芽樹高は35〜127センチの範囲であったが、11月でも40〜127センチとばらつきがある。 |
○必ずしも被圧気味の萌芽から枯れるわけでなく、隣接する数本が一緒に枯れる傾向がある。 |
○萌芽高が2メートルになり、後継樹として確実な状態になるまで推移を観察し、その後3本/株にする。 |
調査プロット(1メートル×5メートル) 3調査区
実生数19本、20本、25本の平均
調査月 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | メモ |
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実生生存数(本) | 21.3 | 20.7 | 20.3 | 20.3 | 20.0 | 19.3 | |
生存率(%) | 100 | 97.3 | 96.0 | 96.0 | 94.7 | 91.7 | |
生存実生の高さ(cm) | 13.3 | 13.2 | 13.2 | 13.2 | 13.2 | 13.4 |
実生苗の調査状況(05年7月)
考察
(8月調査時点)
○ 6月を100とした生存率は96%であり、ほとんど枯死がない。
○ 7月に競合する草本類を刈り払ったことにより生息環境は良好である。
(9月調査時点)
○ 7月に周囲の草を刈り払い十分な光環境にあるためか、8月からまったく枯損がない。
○ 個々の実生の生育状況の差はかなりはっきりしてきた。高さ以外でどう計測するのか来年の課題である。
(10月調査時点)
○ 雑草と競合していないので枯れることはないようだが、かなり貧弱な実生が目立つ。
○ 来春の芽吹きの段階でかなり自然淘汰されることが予想される。
○調査プロット(5u)の実生生存数は、21.3本(6月)から19.3本(11月)と変化が少ない。
○実生樹高は、5〜27cm(6月)の範囲であったが、11月においても同様である。
○比較的小さなものはかろうじて生きているものも多く、来春芽吹きしない可能性あり。
○実生苗が下刈り不要まで成育し後継樹を選定するまでには数年かかると予想される。